三重秘伝。
 法華経-本門寿量品-文の底


第6段「文底真実を判ず」
 但し此の経に二箇の大事あり倶舎宗・成実宗・律宗・法相宗・三論宗等は名をもしらず華厳宗と真言宗との二宗は偸に盗んで自宗の骨目とせり、一念三千の法門は但法華経の本門・寿量品の文の底にしづめたり、竜樹・天親・知つてしかも・いまだ・ひろいいださず但我が天台智者のみこれをいだけり。
 ただし、この法華経に二つの大事な法門(迹門理の一念三千と本門事の一念三千)がある。
 倶舎宗・成実宗・律宗・法相宗・三論宗などは、一念三千の名さえ知らない。華厳宗と真言宗との二宗は、一念三千の法門をひそかに盗んで自宗の教義の骨格とし、眼目としている。
 この一念三千の法門は釈尊の一代仏教の中でもただ法華経、法華経の中でもただ本門寿量品、本門寿量品の中でもただその文底に秘し沈められたのである。
 正法時代の竜樹や天親は、一念三千の法門が法華経に秘められていることは知っていたが、それを拾い出して説くことはせず、ただ像法時代の正師であった中国の我が天台智者だけがこれを心の中に懐いていたのである。

 仏法の究極である一念三千の法門は、法華経の、本門の寿量品の、文の底に沈めてある。
 ※「但」の字は三重に冠して読む。
  但法華経…………権実相対
  但本門寿量品……本迹相対
  但文の底…………種脱相対