御義口伝とは?

 「御義口伝」は、身延において日蓮大聖人が法華経の要文を識義された内容を日興上人が筆録され、大聖人の御允可を得て完成したものと伝えられている。
 「御義」とは大聖人の法門を指す。それを「口伝」すなわち口頭で講義された内容を記録したのが「御義口伝」である。
 構成は上下2巻から成り、初めに「南無妙法蓮華経」について論じられた後、巻上では法華経序品第1から従地涌出品第15まで、巻下では如来寿量品第16から普賢菩薩勧発品第28までと開結二経(無量義経、普賢経)の要文講義が収められている。また巻下では別伝として「廿八品に一文充の大事」と「廿八品悉南無妙法蓮華経の事」が収録されている。
 それぞれの項目では、初めに法華経あるいは開結二経の文を挙げ、それに関する天台・妙楽の釈を引用された後、「御義口伝に云く」として文底下秘法門の立場からの法華経解釈を展開されている。すなわち「御義口伝」では、種脱相対、三大秘法、人法体一など、大聖人の秘要の法門が法華経の要文を通して縦横に示されており、そこに日蓮仏法の法華経観を拝することができる。
 ここで日蓮大聖人と釈尊の法華経との関係について確認すれば、大聖人は釈尊の法華経そのものを弘通されたのではなく、法華経の文底に秘沈された下種の妙法を自ら悟られ、それを三大秘法の南無妙法蓮華経として顕し、末法に弘通されたのである。法華経は、末法における大聖人の妙法弘通を予言した経典であり、大聖人は御自身の弘通の序分・流通分として法華経を用いられたのである。
 したがって、「御義口伝」において示されているのは法華経の語義に縛られた解釈ではなく、御本仏の御境涯のうえから法華経の文を文底下種法門の説明として自在に用いられ、活用されていく「活釈」といえる。