Contents

11/03/15: 放射線と放射能

MiD LIGHT その他・雑談 ( 雑学 )
 皆さん、この2つごちゃになってませんか?
 私は、学生の時に判らなくて、先生を質問攻めにして困らせました。(^^;;

「放射線」とは?
 「放射線」とは、広義では、高いエネルギーを持った電磁波や粒子線のこと。
 電磁波は波長によって様々な分類があり、波長によって名称が変る。
 波長が長い方と「電波」、少し短くなると「光」もっと短くなると「X線」や「ガンマ(γ)線」と呼ばれる。
 粒子線は「アルファ(α)線」「ベータ(β)線」「中性子線」と分類される。

 原子力基本法では、「「放射線」とは、電磁波又は粒子線のうち、直接又は間接に空気を電離する能力(共通の性質としてイオンや電子を発生させる)をもつもので、政令で定めるものをいう。」と定義されている。
 一般的には「放射線」は、この定義での使われ方が多い。
 因みに、γ線、X線などは物質を通過する能力をもった電磁波であり、α線、β線、中性子線、重荷電粒子線は高速の粒子線であり、基本物質は透過しない。
 これらの放射線の「物質を通過する能力」には違いがあって、「中性子線>γ線>X線>β線>α線」の順。

 昔の目覚まし時計の夜光塗料には、α線源を使って光らせてたし、蛍光灯の点灯管(グロー管)にはβ線源を活用していた。(今は放射性物質の規制が厳しいので、使われていない。)
 α線は紙でも透過出来ないから、時計の透明プラスチックで十分遮れる。
 β線は軽金属で遮れるので、点灯管はアルミで被われていた。

「放射能」とは?
 「放射能」とはレントゲンがX線を発見した後、あのノーベル賞のキュリー夫人(マリー・キュリー)がウラン鉱石から放射線を出しているのはウラン原子であることを発見し、その「放射線を出す性質(能力)」を「放射能」と名づけた。
 「能力」なので放射「能」となった。
 放射性物質が崩壊して放射線を出すので、放射能(放射線を出す能力)は時間と共に減少する。
 この放射能が半分になるまでの時間を「半減期」と言う。
 例えば、原発で作られるセシウム137の半減期は30.07年です。
 1あるセシウムの放射能は半分(1/2)に弱まるのが約30年後、1/4になるのにもう30年の約60年後、1/8になるのは約90年後です。
 半減期の長いプルトニウム239の場合、半分になるのに約2万4000年もかかる。
 原発で出る廃棄物の処理が、いかに厄介か判りますね。

放射線の単位
 報道の単位も判りにくいですね。
 出てくる単位に「シーベルト(Sv)」「グレイ(Gy)」「ベクレル(Bq)」があります。

 「ベクレル(Bq)」は放射性物質が放射線を出す能力を表す単位。
 「グレイ(Gy)」は放射線のエネルギーがどれだけ物質に吸収されたかを表す単位。
 「シーベルト(Sv)」は受けた放射線の量を表す単位。体への影響の度合いを測る物差しとして用いる。

 放射線の単位を雨に例えると。
 空から単位時間に降る雨粒の総数がベクレル。
 人に当たって濡らした水の量がグレイ。
 雨に当たった影響がシーベルトになります。
 このため、人に当たって濡らした水の量(グレイ)が同じでも、小雨より大雨のほうが痛く感じるように、人に与える影響(シーベルト)が異なります。
 放射線も、人に当たってぬらした量(グレイ)が同じでも、放射線の種類(アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線)や受けた人の体の部位が違えば、身体に与える影響(シーベルト)は異なります。
 報道でよく聞く単位は1mSv(ミリシーベルト)=1000μSv(マイクロシーベルト)です。

 ところで、放射線は実験室とか原発とか病院といった特別な場所にある物ではありません。
 「放射線」は、いつでも、どこにでもあるのです。
 宇宙の成長と共に放射性物質は作られているので、地球自体や食物から、さらに宇宙(他天体)からも放射線が降り注いでいる。
 人間は世界平均、自然放射線を浴びる量は2.4mSv/年程度(宇宙から0.39/大地から0.48/食物から0.29/空気中のラドンから1.26)。
 一般の人工放射線量の限度を1年間に1mSv(ミリシーベルト)としている。
 健康診断などのX線写真では、600μSv(0.6mSv)浴びるし、CTスキャンなら6.9mSv(6900μSv)も浴びている。
 飛行機で成田~NYを往復すれば、機内で宇宙放射線を200μSv(0.2mSv)浴びる事になる。

 要は「量」が問題。
 1年間に1mSvくらいの量では特に気にする必要もない。
 問題が生じるのは大量の放射線を受けた場合。
 その場合の人体への影響には、さまざまなものがある。

放射線の量と急性の放射線影響((財)原子力安全研究協会HPより)
放射線の量
7000~10000mSv以上  100%の人が死亡
2500~6000mSv  生殖腺:永久不妊
3000~5000mSv  50%の人が死亡
1000mSv  10%の人が悪心、嘔吐
500mSv  末梢血中のリンパ球の減少
200mSv  これより低い線量では臨床症状が確認されていない
http://www.remnet.jp/lecture/qa_fig/m09_2.jpg

まとめ
 「放射線」とは「電磁波や粒子線」の事。
 「放射能」とはこの「放射線を出す性質(能力)」の事。
 「放射線」は「量」若しくは「長時間」浴びると危険。

 放射線から身体を守る基本は「距離」「時間」「遮蔽」。
 放射線の影響は距離の2乗に比例して弱くなり、時間に比例して放射線量が増える。
 放射線が強い場合は「素早く」「避難」することが有効。
 例えば、放射性物質から100m離れた所の人は10m離れた人に比べ放射線量は1/100になるから効果は大きい。
 一方、放射線が弱ければ「屋内待避」するだけでも透過力の低い放射線(α線、β線)を遮ることができてこれも有効。
 特にコンクリートの建物はその効果は大きい。
 (多少コンクリートの水分(水素原子)が中性子線でも減速剤になる。)

 放射性物質のチリを体内に取り込むのは、「体内被爆」になるので、注意が必要。
 体外被爆であれば、洗い流す(除染)すれば良いが、「体内」では排出されるまで、「長時間」放射線を浴びる事になる。
一般的な除染の方法

 ネットでの情報に「放射性ヨウ素からの被爆の対処に、ヨード系うがい薬を飲め、昆布を取れ」と言うのがあるが、全くのデマ。
ヨウ素を含む消毒剤などを飲んではいけません-インターネット等に流れている根拠のない情報に注意-

 基本は、帽子、マスク、皮膚の露出の少ない衣服。
 なんかある時には、なっちゃうので、今、一生懸命作業をしている自衛隊隊員を応援しましょう。


18:00:00

Trackback

このエントリにトラックバックはありません

このトラックバックURLを使ってこの記事にトラックバックを送ることができます。 もしあなたのブログがトラックバック送信に対応していない場合にはこちらのフォームからトラックバックを送信することができます。

Comments made

No comments yet

Add comment